ペットの鍼灸治療
ペットの鍼灸治療とは
西洋医学は臓器をそれぞれ別のものと考え,血液検査やレントゲン検査などで細かく調べますが,東洋医学は脈や目の血管、舌の状況、毛並など様々な要素から体の声を聞き取り「一つの身体」として全体を把握し、不調を治していきます。
東洋医学で一番大切にしているのは「気」と呼ばれる、体の持つエネルギーです。特に病気はないけれど最近なんとなく元気がない。寝ている時間が長い。これらは全て病気の始まり「未病」と呼ばれる状態です。未病の状態を改善することで病気になることを防ぐことができます。また、西洋医学では元気にする治療というのはありませんが、東洋医学では元気にすることが得意な治療といえるでしょう。
鍼灸治療とは東洋医学の治療で体中に約360個ある経穴(ツボ)を刺激する事で、気を調節し、自然治癒力を引き出します。痛くて触られたくないところでは経路(ツボとツボを結ぶ線路のようなもの)を用いて少し離れた同じ効果のあるツボを刺激することで治療を行うことができます。

鍼灸治療メニュー
問診と身体検査
問診(困っている事、今までの経過、性格、体質、性格、食事内容、生活環境)と身体検査(脈、舌の状況、眼の輝き、毛並み等)により、症状の原因や病態を把握します。
鍼治療
髪の毛程の細い鍼を用いてツボを刺激します。痛みを感じることはほとんどありません。怖がりの子、敏感な子は刺さないタイプの鍼を使用することもあります。
灸治療
灸点紙と呼ばれる台座の上に艾(もぐさ)を乗せて点火します。局所的に温泉に入っているような温まる感覚で、ツボを刺激します。毛を刈る必要はありません。
推拿(すいな)
気功をもちいた按摩療法(マッサージ)です。手で体を触りながら、不調を治していきます。
漢方薬
植物などの生薬を配合して作られたお薬です。鍼灸治療の補助として用います。
薬膳
特別な食材を用いず、普段の食べ物のそれぞれの効果効能を考慮してレシピをご提案します。
治療時間
鍼と灸を組み合わせて治療し、症状や重症度によりますが時間は15-30分程度です。
通院間隔の目安
軽度な疾患では1週間後に再診してもらい、治療の反応を見ながら通院間隔を決めます。症状や重症度、治療の効果により、1週間に1回、2週間に1回、月に1回と間隔をあけていく事が多いですが、慢性疾患では月に1回の治療で継続する事をお勧めします。
適応症状
体を一つの物と考え、生体のバランスを整える東洋医学には緊急疾患を除いて、適応外の症状はありません。西洋医学で手の施しようがないと言われるような難病、重症症例でも治療を施すことで症状が軽くなったり、活動性が出る可能性があります。
また、「未病」(自覚症状があっても検査で異常がない)と呼ばれる病気になる前の状態を治療することができる為、病気予防を目的とする受診もおすすめいたします。
適応疾患(効果が期待できる症状)
運動器系:椎間板ヘルニア、関節炎、手術後のリハビリテーション等
神経系:前庭障害、神経麻痺、てんかん発作等
消化器系:胃腸炎、下痢、便秘等、食欲不振
腎泌尿器系:慢性腎臓病、膀胱炎、尿道閉塞等
呼吸器系:咳、喘息等
その他:元気消失、疼痛、虚弱体質、アレルギー体質等
老犬・老猫:末期ガン等の緩和、高齢動物のQOLの改善
※高齢動物の治療は積極的な治療ではなく、最後の日まで飼主様と一緒に心穏やかに過ごせるような治療をめざしています。
〇鍼灸治療、漢方薬は一部の保険会社(アニコム、アイペット等)で保険が適応されます。
当院での鍼灸治療例
犬 M.ダックス (避妊済メス) 17歳3カ月齢
10年前に椎間板ヘルニアの手術
3年前から起立不能

初回診療時
- [ 治療経過 ]
- ・当院初診 2022/05/04:主訴:後肢が内側に入り、支えないと立てない、削痩(体重:3.40kg)鍼灸治療
- ・通院2回目 2022/05/11:立てるようになり,食欲も増加、体調がかなり良い(体重:3.52kg)
- ・通院3回目 2022/05/21:2カ月間寝たきりの状態から、今はウロウロ歩けるようになり、Uターンもできるようになった

鍼灸治療3回目後
犬 M.ダックス (避妊済メス) 12歳齢
前肢神経痛、椎間板ヘルニア、股関節炎にて2020/8から月に1回鍼灸治療継続

犬 鍼灸治療中の様子
猫 メインクーン (去勢済オス) 17歳齢
後肢のふらつき、鼻炎(鼻つまり)にて月に1回鍼灸治療継続
2022/2/2から2週間毎

猫 すいな(マッサージ)治療中の様子