チンチラの病気

目 次

チンチラの生態と特徴

チンチラは4000メートル級の高山(南米大陸のアンデス山脈)に棲息する動物で、棲息地は傾斜のある岩場で寒冷(-15~20℃)な乾燥地帯です。チンチラの持つ豊かな被毛は厳しく寒く乾燥した気候に耐えるために進化したもので、そのために高温・多湿に耐える事が出来ません。餌は主に草の葉や茎、根、樹皮、コケ等を食べ、岩場や草木に結露した水滴等を飲みます。

ワシ、キツネ、イタチ等の肉食獣に捕食されないように隠れて生活するため、夜行性で夕方から活動を始めます(日中活動も可能)。性格は警戒心が強く、好奇心も旺盛で活動的。意思表示が明確で、興奮したり嫌な事をされると「ギーギー」「グーグー」と甲高い声を上げます。特に聴覚が発達しているため音の刺激に敏感です。

チンチラの飼育について

チンチラは神経質な性格に加え、聴覚が発達しているために、静かでストレスが少ない環境での飼育が適しています。騒音や電子機器等にも敏感に反応するため、機器の近くには飼育ケージを置かないようにします。そんなチンチラの環境と飼育方法をチェックしてみましょう。

飼育頭数
飼育は単独でも複数でも可能ですが、喧嘩が起こる事があるので原則的には単独飼育が望ましい。

ケージ
1. 跳躍力が優れている為、充分な運動量を確保できるスペースが必要になります。跳躍力が高く、非常に活動的なので高層で立体的にケージを設置する事が理想です。(狭いケージの場合、ケージの外で運動させる時間を多く取る事が必要になります。)
2. 齧(かじ)る力が強いため、金属製の金網タイプのケージを選びましょう。
3. 金網床の網目が大きいと後肢が挟まり、骨折の可能性があるので注意が必要です。
(網目の大きさは15×15mm以下が望ましい)
4. 床敷き、餌容器、給水器等を設置します。
(床敷きはビートパルプ、コーンチップ、乾草を敷く)
5. ケージ内の高い位置に数段の棚を設置し、跳躍して移動できるようにします。
6. 精神的にリラックスさせるために、身体が隠れるくらいの大きさの小屋を設置します。
7.トイレは一定の場所には行わなず、排泄物の臭気は少なめです。(一定の場所で排泄をしないためケージの周囲は汚れる傾向にあります。)

温度・湿度・照明
チンチラは乾燥・寒冷な高山で生活しているため湿気と暑さが大敵。住環境の最適温度域は温度:15-20℃、湿度:40-50%で、21℃以上になると不快感、32℃以上で死に至ります(ただし、湿度を50%以下に設定すると、20-26℃でも適応可能)。特に梅雨と夏は熱中症に陥りやすいので注意が必要です。
飼育下では5℃以下や冷房の風が直接当る様な寒すぎる環境では肺炎等、呼吸器疾患も起こりやすくなります。
注:環境湿度があまりにも低いと脱毛の原因になったり、呼吸器疾患も起こりやすくなります。
【熱中症について】体温上昇により、呼吸促迫や歯肉の発赤等の徴候が見られたら迅速な救急処置が必要となります。(冷房、保冷剤で体温を下げる、経口的に飲水等)
※特に日光浴は必要ありません。

食餌
チンチラは草食動物で、牧草を主食としますが、その他チンチラ用ペレットや野菜を与えます。チンチラが活動し始める夕方から夜の早い時間にかけて給餌を行います。牧草、ペレットは常に餌容器に入れておき、野菜は時間を決めて新鮮なものを与えます。ペレットは嗜好性が高く、カロリーが高いため肥満に注意しましょう。また、果物やオヤツは時々与える程度にします(ナッツ類やレーズンなど糖分のあるオヤツはなるべく与えない方が望ましい)
※チンチラは食糞をします。(直接ではなく、排便後に再食する)

栄養
チンチラの栄養学の詳細は不明(繊維質:18-30%、粗蛋白:15-18%、粗脂肪:2-3%)
(ペレットの成分の目安 蛋白質:16-20%、脂肪:2-5%、繊維:18%)

飲水
ボトルタイプが標準ですが、皿タイプを好むチンチラもいます。

日頃のケア

運動をする
木には登りませんが、岩場を飛び跳ねて生活しているので跳躍力が優れており、充分な運動量を確保できるスペースが必要となります。

齧(かじ)る
齧るものとして、齧り木または軽石(チンチラストーン)を齧らせます。チンチラは吐き戻しができないので、プラスチックやビニールを嚥下して食道に閉塞する事故がありうるので注意が必要です。ストレスがかかると、自分の被毛を齧ったり(毛咬み)、四肢や尾を齧る(自咬症)が起こりやすい。ケージの外に出した時に電源コードを噛んで感電する事があるので注意しましょう(保護カバーの装着が有効)。

砂浴び
チンチラの砂浴びは皮膚から出る分泌物(ラノリン様皮脂)を落とすために必要不可欠な行為(習性)です。ラノリンはチンチラの被毛をコーティング(保護)し、断熱効果、保湿効果があります。ラノリンは次々に分泌されるので余分なラノリンを除去しないと被毛が絡み毛玉ができてしまいます。固まった毛玉を飲み込むと、胃内毛球症になる可能性があります。
●砂浴びの頻度は1日1-3回、1回5-10分が目安です。
●砂浴びの容器には寝転がって砂浴びが出来るものなら何でも良く、砂の深さはおよそ1cmあれば充分です。
●砂浴びした砂の中には余分なラノリンと被毛に付着したゴミやホコリが混ざっているので、砂はこまめに取りかえ、1週間に1回は全て交換しましょう。
●砂浴びは被毛の清掃だけではなく、砂で遊ぶ事によるストレス発散やリラックス効果もあります。

当院に来院するチンチラの主な病気

膀胱炎、尿路結石 … 血尿や頻尿、オスでは排尿障害
[ 原因 ]
・カルシウムの多い食事や尿路の細菌感染などが関与します。オスでは精嚢腺の分泌物が結石の核になり、好発します。
結石箇所結石が尿道に移行手術により結石摘出

不正咬合 … 切歯及び臼歯の過長により採食低下、流涎、体重減少、削痩
[ 原因 ]
・牧草の量が少なかったり、ソフトタイプのペレットを多く与える事により起こります。また、ケージを齧る事も原因になります。
臼歯過長像,臼歯歯根吸収像臼歯不正咬合整復CT写真(青の矢印が吸収象)

胃のうっ滞・毛球症 … 食欲低下、腹部膨満
[ 原因 ]
・ストレスや痛みなどにより、胃の内容物がうっ滞を起こします。場合よっては急性胃拡張を起こし、重症化する事があります。毛づくろいで胃内に毛玉を形成したものは毛球症と呼びます。
急性胃拡張(胃内液体貯留)胃内容物除去後胃内容物除去後

皮膚糸状菌症 … 鼻、耳、前肢に脱毛とフケ
[ 原因 ]
・免疫機能が不充分な幼いチンチラに発症します。

自咬症 … 自分の被毛や皮膚を咬む
[ 原因 ]
・主にストレスにより起こりますが、遺伝や内分泌も考えられます。

肺炎 … 呼吸促迫、食欲低下
[ 原因 ]
・ストレスや冷房の風が直接当たる様な寒すぎる環境が考えられます。