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犬・猫の歯周病

目 次

歯周病の症状と原因

当院での治療の中でも特に多いのが歯周病です。歯周病がさらに悪化すると歯だけではなく様々な疾患の原因となります。歯周病とは歯肉炎と歯周炎の総称で、歯垢や歯石の付着だけではなく、顎の骨が細菌感染により溶けてくる病気です。2歳以上の犬猫の80%、8歳齢以上でほぼ100%が歯周病に、罹患(りかん)していると言われており、歯周病を放置すると口腔内細菌(歯周病菌)により全身的な様々な病気(心臓病、腎臓病等)を引き起こす可能性があります。歯周病はできるだけ軽い症状から処置を行い、口腔内を良い状態に保つ事が重要です。
症状
歯周病の症状は口臭、慢性的なくしゃみ・鼻水、歯茎から出血、頬の腫れ、歯のぐらつき、痛みで食事が噛めない等。
原因
歯周病は歯石が原因ではなく、歯垢の中の歯周病菌が直接の原因になります。

歯周病の治療について

歯石除去前歯石除去後
表面の歯石を除去しただけでは、歯周ポケット内に歯周病菌が残ってしまいます。歯周病菌により歯周周囲の組織(歯肉や顎の骨)が壊れたり、産生される毒素(硫化水素等)により口臭も残ります。そのため当院では全身麻酔により歯石除去を行ないます。
※麻酔について・・・100%安全な麻酔はありませんが麻酔をかける前に充分な術前検査を行ない、安全を確認してから、その動物に合った麻酔薬を選択します。麻酔により痛みや恐怖などのストレスをなくし、歯周ポケット内の歯垢や歯石を除去し本来の歯周病治療が可能になります。
当院での麻酔は
●術前検査(血液検査、X線検査、超音波検査、心電図検査)を処置数日前にまたは処置当日に行ないます。
●麻酔は静脈注射麻酔薬で導入し、吸入麻酔薬で維持します。
●麻酔中は呼吸・血圧・体温モニター及び心電図をモニターします。
●鎮痛処置として、局所麻酔と2種類の鎮痛剤を使用します。

歯石の除去

歯石除去の実際
1.スケーリング
[使用器具:超音波スケラー]
歯の表面と歯周ポケット内の歯垢・歯石の除去。
スケーリング
2.ポリッシング
[使用器具:ブラシカップとラバーカップにフッ素入りの研磨剤]
スケーリング後に歯の表面を研磨し歯垢・歯石の再付着を防ぐ。
スケーリングスケーリング
3.プロービング
[使用器具:プローブ]
歯周ポケット(歯肉溝)の深さを測定する。
※正常な深さ→小型犬(2mm以下)、大型犬(4mm以下)、猫(0.5~1mm)
スケーリング
4.ルートプレーニング
[使用器具:キュレット]
歯周ポケット内の歯垢・歯石を除去し、歯根表面を滑らかにする。
ルートプレーニング
5.キュレッタージ
[使用器具:キュレット]
ルートプレーニング後、歯周ポケット内の不良な歯肉の除去。
6.抜歯
臼歯(多根歯)は分割処置してから抜歯します。
歯周病の重症度の評価--口腔内検査、プロービング、歯科X線検査
【歯周病の重症度による処置内容】
スケーリングポリッシングプロービングルートプレーニングキュレッタージその他
歯石沈着××
歯肉炎×過剰歯肉切除
軽度歯周病××
中程度歯周病×
重度歯周病×××抜歯
処置内容
歯石沈着
歯石に対してスケーリングとポリッシングを行ない、歯周病の予防を行ないます。
歯肉炎
歯肉炎に対しては過剰な歯肉を切除します。歯肉炎は歯周病の一つの症状ですが、炎症部位の歯周病菌により歯周病が進行します。
軽度歯周病
歯石に対してスケーリングとポリッシングを行ない、プロービングにより歯周ポケットの深さを測ります。歯周ポケット内の歯垢歯石に対して、抜歯した部位を縫合します。
中程度歯周病
歯周ポケット内の歯垢歯石に対して、ルートプレーニング、キュレッタージにより除去します。
重度歯周病
歯の動揺が重度で、歯槽骨まで破壊が進行し、歯を維持する事が困難と考えられたら抜歯します。その後歯周病の原因となる歯肉部を削り、抜歯した部位を縫合します。

ご自宅でのデンタルケア

歯周病の予防は動物病院での定期健診と家での毎日のブラッシングにより歯垢を落とす事です。歯垢(プラーク)は放置すると3-5日後に歯石になります。歯垢が歯石になってしまうとブラッシングでは除去できなくなり、6カ月~1年毎の定期的な健診と歯石除去が必要になります。歯ブラシによるブラッシングは歯周ポケット内の歯垢の除去が可能で、最も重要なケアの方法になります。

歯ブラシは動物用を使用
●予防用歯ブラシ:歯の表面の歯垢を除去
【毛先が平たん(フラット)で先細りの構造】
●歯周病用歯ブラシ:歯周ポケット内の歯垢を除去
【毛先が先細り(テーパー)】
●歯磨き(デンタルペースト):犬が好む味で効果があるもの
デンタルケア用品

ブラッシング
動物用の歯磨きと共に、動物用歯ブラシを使用します。歯周病がない場合は予防用歯ブラシを使用し、歯周病がある場合は歯周病用歯ブラシを使用します。ブラッシングは「しつけ」と同様に時間をかけて、少しづつステップを踏んで行ないます。
※当院では月に1回、「歯磨き教室」を開催しています。

性格的にどうしてもブラッシングができない場合、又は老犬や重い内臓疾患で麻酔がかけられない場合
噛む事で物理的に歯垢を除去し化学的に歯垢を抑制するデンタルガムや口腔内の善玉菌を増やし、歯周病の予防や治療効果のある製剤等があります。
また、歯周予防効果のあるデンタルスプレーやデンタルリンスを使用する事もできます。

その他

無麻酔スケーリング
スケーリングには麻酔をかけずに行う無麻酔スケーリングもありますが、当院では行いません。理由としては処置中に無理やり押さえつけられる事で、怖い思いや痛い思いをするために、処置後に犬は口を触らせなくなる子がいるので歯のブラッシングができなくなる事があります。
また一番の理由は歯周病の悪化の発見が遅れてしまうことです。無麻酔による歯石除去(スケーリングのみ)は歯の表面はきれいになりますが、歯周ポケットの中の歯垢や歯石が残ってしまい歯周病が進行します。見た目がきれいでも口臭が改善しなかったり、感染により顔が腫れたり、歯が抜け落ちてしまうことが事があるのです。これらの理由から無麻酔スケーリングが病気の悪化につながると考え、行っていません。

乳歯遺残
犬や猫では生後3カ月齢くらいから乳歯が永久歯に生え替わっていきます。本来、犬歯は6カ月齢くらいで乳歯から永久歯に生えかわりますが、両方が並んで生えるために、乳歯がうまく抜けない事があります。乳歯が残ると歯垢や歯石がたまりやすい状態になってしまうため、7カ月齢くらいまでに乳歯抜歯の処置が必要です。
※当院では避妊手術、去勢手術の際に同時に行ないます。